後の西欧絵画の女性ヌード像の手本となったと言われる「ウルビーノのヴィーナス」。
ルネサンス期のヴェネチア派の巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオが描いた、裸体画です。
当時は、女性の裸体を描く場合、その女性は、実際に存在する女性ではあってはならず、神話の登場人物である女神ヴィーナスとして描かれています。
ヴェネチア派
ルネサス期に15世紀後半から16世紀にかけて、ヴェネチアで発展した美術の流派です。
ヴェネチア派は、色彩に重きを置き、デッサンをほとんどしません。
特にティツィアーノは、直接キャンパスに絵具で描くという方法を多様、明暗を色彩で表現、流動的であいまいな線でのびのびとかつ空気感や雰囲気を描こうとしました。
下書きや素描にとらわれなで作品を多数制作して、ヴェネチア派の代表的画家となっています。
「ダナン」
(1553年-1554年)
一方で、デッサンを重視し、あいまいさを排除、きっちりとした線で形を正確にとらえようとしたのがフィレンツェ派です。代表的なのがボッティチェッリ、フィリッポ・リッピなどです。
「聖母子と二人の天使」(フィリッポ・リッピ作)
(1450年-1465年)
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
鮮やかな色彩とのびのびと描かれた作品は、ヨーロッパ中の王侯貴族を魅了し、20代には画家として名声を得ていたようです。
各地の王侯貴族からの注文が後を絶たなかったと言われています。
「自画像」
(1567年)
ティツィアーノの多様な色使いや奔放な筆遣いなどは、当時では革新的で、特に初期の作品は、その後の画家たちにも多きな影響を与えたと言われています。
「フローラ」
(1515年-1520年)
ティツィアーノの初期の作品
ウルビーノのヴィーナス
本作品「ウルビーノのヴィーナス」は、ティツィアーノが50歳頃の作品とされています。
ジョルジョーネの「眠るヴィーナス」を参考に描かれていますが、女性の背景を田園から邸宅内に移し、女性もはっきりと目を開けた状態で描いています。
「眠るヴィーナス」
(1510年-1511年)
「 ウルビーノのヴィーナス 」
(1538年頃)
豪華な宝飾品と侍女が描かれているなど、実在の女性が描かれていると思われますが、手にバラを持たせることで女性が女神ヴィーナスであるとしています。
① バラの花はヴィーナスのトレードマークで、ヴィーナスであることを示します。
② 犬は忠節、貞操などの意味がありますが、足元で眠ってしまって、役割を果たしていません。
③ 侍女たちは、ヴィーナスのためのドレスを探しているようです。一人は、結婚式用の豪華な青と金のドレスを持っています。
この作品は、当時のウルビノール公が発注したとされ、結婚相手の幼い花嫁(10歳頃)への性教育の意味もこめられていたとも言われています。
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