バロックの巨匠カラヴァッジョが死の直前まで保有していた3点の作品のうちの1点で、存在が知られていたものの、2014年に発見された作品です。
「法悦のマグダラのマリア」はカラヴァッジョ自身が何点もコピーを制作していましたが、2014年発見のものが原画の可能性が高いと言われています。
マグダラのマリア
マグダラのマリアとは、聖書に登場する聖女で、イエス・キリストに七つの悪霊を退治してもらい、キリストの磔、埋葬に立ち会たうえ、キリストの復活を目のあたりにしたとされています。
マグダラは、地名でマグダラ出身のマリアということが通説となっています。
キリスト教の宗派ごとにいろいろな言い伝えがありますが、聖母マリア同様にキリスト教においては重要な人物であり、多くの作品に描かれています。
カラヴァッジョ自身も数点の作品でマグダラのマリアを登場させています。
「懺悔するマグダラのマリア」
(1594-1595年)
「懺悔するマグダラのマリア」は、カラヴァッジョの初期の作品ですが、それまで聖女として裸体で描かれていたマリアを一般的な女性の姿で描きました。
法悦とは
法悦とは、「仏の言葉を聞き、それを信じることによって心に喜びがわくこと」と辞書にあります。
この作品ではマグダラのマリアは神の言葉を聞いて喜びが沸いている場面ということになります。
「法悦のマグダラのマリア」
(1606年)
初期のカラヴァッジョの作品とはまったく違うマリア像を描いています。
マリアの意識はこの世にはなく、天の神や天使の声を聴いている様子です。
右下にはマグダラのマリアを表すドクロが描かれています。
セルフコピーの作品
カラヴァッジョは、「法悦のマグダラのマリア」セルフコピーを多く制作し、18作が存在したと当時記録されています。
2014年に本作品が発見されるまでは、所有者の名前にちなんで、「マッダレーナ・クライン」と呼ばれていた作品が最も原画に近いとされていました。
「マッダレーナ・クライン」と呼ばれる「法悦のマグダラのマリア」
(1606年)
原画と比べるとドクロが描かれておらず、マリアのおでこ当たり皺が描かれています。
こちらの作品は、まだ、マリアに意識があるように見られます。
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