印象派の画家たちを作品の購入などを通じて経済面からも支援した、パリの上流階級出身のギュスターヴ・カイユボットのキャリア初期の代表作「床削り」です。
「床の鉋がけ」「床に鉋をかける人々」とも呼ばれる場合があります。
カイユボット初期の特徴として、遠近法が強調され、幾何学的に直線などが多様される描写が見られますが、本作品はその特徴がもっとも表現された作品です。
また、カイユボットは、当時、近代都市へと変貌をとげるパリの様子やそこで暮らす人々の様子を描くことが多く、本作品では新居の床の鉋がけをする労働者を描いています。
作品 床削り
本作品「床削り」は、サロンに出展されていますが、落選後、第二回印象派展に他の7作品ととも出展されています。
「床削り」
(1875年)
同時に出品した「窓辺の若い男」や「ピアノを弾く若い男」(いずれもモデルはカイユボットの弟)など上流階級の様子を描いたものが多かったなか、本作は、労働者を描いており他の作品と対照的な作品となっています。
「窓辺の若い男」
(1875年)
「ピアノを弾く若い男」
(1876年)
鉋がけの後の床の跡により、消失点が画面外の遠くにあるような遠近法を強く意識させる描写となっています。
鉋がけの床の直線的な跡と壁の直線を多用した装飾が強調された遠近法と相まって、鑑賞者は本作品から幾何学的な印象をうけるような描写となっています。
幾何学的な画面のなかに上半身を裸にした鉋がけをする労働者を描くことで、より労働者の人間味を強調しているように思えます。
また、労働者を中心、左右に配置することで強調している遠近法と幾何学的な背景との調和をはかっているようにも思えます。
カイユボットは、印象派とされていますが、写実的な描写を得意としており、本作品でも床に置かれた工具や削りカスなど詳細に描写されています。
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