イギリス人の画家ですが印象派画家としてフランス パリで活動することが多かったアルフレッド・シスレーの作品「ハンプトン・コートの橋の下」です。
本作品は、第一回印象派展の後、支援者に招かれてイギリスに滞在した際に描いた作品で、ロンドン南西部にあるハンプトン・コート宮殿近くの鉄橋の下からの様子を描いた作品です。
産業革命後、急速に進む近代化の象徴ともいえる鉄橋と光を反射して揺らめく水面が対照的に描かれた作品です。
シスレーはピサロに最も印象派らしい画家と称されるほど、修正画風を変えることなく印象派的な風景画を描き続けた画家です。
作品 ハンプトン・コートの橋の下
本作品は、イギリス人でありながらパリで生まれ、パリで活動していたシスレーが支援者に招かれロンドンを訪れていた際に描いた作品です。
「ハンプトン・コートの橋の下」
(1874年)
作品には、鉄橋が大きく描かれていますが、一番に目に入るのは水面の描写です。
印象派の画風である筆触描写で水面の揺らめぎが描かれています。
水面の揺らめぎの描写は、冷たく無機質な鉄橋と描写しているような印象を受けます。
水面と鉄橋の対照的な描写とともに、ボート競技の練習をしている人々や川辺を歩く人々など、普段の生活をしている人々が描かれています。
また、中央にはこれから使用されるであろうカヌーが描かれ、人々が平和に生活している様子がわかります。
シスレーは1870年に普仏戦争を経験し家を追われています。また、普仏戦争後のパリ・コミューンによる騒乱も経験しており、普段の生活はシスレーにとって貴重なものだったと思われます。
近代化の象徴としての鉄橋と自然の象徴としての水面の揺らめぎを対照的に描き、その中に普段の生活を営む人々とその様子を描いた作品です。
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