17世紀、オランダ黄金期の画家ハブリエル・メツ―の晩年の作品「病気の子供」です。「病気の少女」とも呼ばれることがあります。
メツ―は、多様な様式で作品を制作していますが、晩年は同時代の画家であるピーテル・デ・ホーホやヨハネス・フェルメールのような様式の作品を制作するようになります。
本作品「病気の子供」もそのような時期に描かれており、色彩の表現や室内での日の当たり方の表現などデ・ホーホやフェルメールと類似した表現となっています。
作品 病気の子供
本作品は、アムステルダムでペストが流行した後に描かれた作品と言われています。当時はペストでアムステルダムの人口の10分の1が亡くなったと言われています。
作品に描かれている子供もペストになってしまたのかとても顔色が悪く、体に力もなく目もうつろです。
「病気の子供」
(1660年頃)
母親が心配そうに子供を見つめています。母親の特徴的な帽子は、既婚の女性が当時被っていた帽子で、指には結婚指輪が描かれています。
母親がはいている赤いスカート、膝にのせている青い布、子供の黄色い服が抑制的な部屋の背景に対してコントラストとなり、鑑賞者の視線を引きつけています。
分かりずらいですが、母親の背後の壁の右手には磔のイエス・キリストの絵が掛けられており、母親と子供が受けている苦難の状況を示しています。
また左手の壁には地図が掛けられており、地図の上にメツ―の署名が記されています。
子供は食事がすることが出来ないのか、画面左下のテーブルには、スプーンが入れられたおかゆの壺が手をつけらないままになっているようです。
子供と母親の目線は画面上で対角線上に配置されており、とてもバランスの取られた構図となっています。
また、母親と子供の描写は聖母マリアが磔で亡くなったイエス・キリストを抱くピエタの構図を表現しているとも考えられています。
(サン・ピエトロ大聖堂のミケランジェロ作によるピエタ)
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