ヨハネス・フェルメールの最晩年の作品と言われている、「信仰の寓意」です。
フェルメールの寓意画には、他に「絵画芸術」がありますが、「絵画芸術」に比べると、より簡略的・省略的な筆遣いになっています。
本作品前のフェルメールの作品と比べると、よりバロック的な表現がされていると言われています。
また、フェルメールはプロテスタントの国のオランダの画家ですが、本作品ではカトリック的な表現が試みらています。
女性は信仰の寓意
これまでのフェルメール作品と比べて、女性の表情やしぐさに不自然さがあると言われています。
実在の人物ではなく、信仰を表す寓意像のため、意図的に不自然さを残しているのかもしれません。
机の上には聖杯、聖書を暗示する大きな本が描かれています。
女性は天井から下がっている球体を見つめています、球体はフェルメールブルーで色付けされたリボンで天井から吊るされています。
球体は、キリスト教ではこの世の儚さ、虚しさを表します。球面はよく見ると室内が映り込んでいるように描かれています。
背後のキリストの絵
「キリスト磔刑」
(1620年頃)
作品の背後に描かれている画中画は、ヤコーブ・ヨルダーンスの「キリストの磔刑」と考えられます。
フェルメールは、この絵の模写を所有していたようで、遺産目録に「十字架に架かるキリストを描いた絵」という記録が残っています。
地球儀と蛇
女性が踏みつけている地球儀は、世界を表し、イタリア人美術学者が記した寓意画集で描かれている描写から着想を得ていると言われています。
また、押しつぶされている蛇は、キリスト教の原罪を表し、奥にリンゴが転がっています。
アダムとイブが蛇にそそのかされて、リンゴを食べてしまい楽園から追放された原罪を示しています。
当時のオランダはプロテスタントの国で、カトリック国のスペインから独立した背景がありますが フェルメールは結婚を期にカトリックに改宗したとされており、本作品でもカトリック的な表現が多くなっていると言われています。
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