16世紀のフランドル(ベルギー北部、オランダ地区)の画家ピーテル・ブリューゲルの晩年の作品「怠け者の天国」です。
ブリューゲルが亡くなる2年前の1567年に制作された作品です。
当時のフランドルでは支配者でありカットリック国家であるスペインが当地のプロテスタントへの弾圧を強めていた時代で、作品のように食料を心配することなく、怠けることは夢のような時代でした。
そのような時代背景からか、「寝てるだけで食料がやってくるという怠け者の天国がある」という話がフランドル地区でひろまり、ブリューゲルもその話から本作品を制作したと思われます。
作品 怠け者の天国
作品の中央に3人の怠け者が寝そべっています。それぞれ、その職に関連する者を傍に描いて各々の社会的地位を表しています。
「怠け者の天国」
(1567年)
右から本をそばに置き、毛皮のコートの上に寝ているのは聖職者です。
脱穀に用いる農具の上で寝ているのは農夫です。
槍と甲冑をそばに寝ているのが兵士です。下にしているのはクッションのような物のようです。
寝そべっている下のものでも当時の差別社会が表現されています。
作品中に散りばめられた食べ物
作品中には多くの食べ物やそれにまつわるものが描かれ、怠け者の天国がいかに食べ物にあふれているか描かれています。
屋根がタルトの家
作品左には屋根がタルトの家が描かれ、なかには兵士の甲冑を拝借した従者が口を開けています。
口を開けているのは飛んでいる鳥が焼き鳥になるのを待っている様子と言われています。
ソーセージの束の柵
作品奥に描かれている策はソーセージの束で出来ています。
皿の上の鳥とナイフが刺さった豚
既に食べられることが決まったように皿の上に鳥がすでにおかれ、豚にはナイフが刺さっています。
足のついた食べかけの卵
聖職者と農夫の間には、足がついてナイフが刺さった食べかけの卵が歩いています。
タルトで出来たサボテン
作品右のサボテンはタルトで出来ています。
右奥の雲から出て来ている人物
作品の右奥には雲のようなものからでてきている人が描かれています。
手にはスプーンをもっており、「怠け者の天国」にたどり着くことができた人のようで、これから食べ物をおなか一杯食べて、寝て過ごせることが許された人です。
キリスト教では欲深いことと怠けることは罪として教えられるため、人々が夢見る世界とキリスト教の罪をブリューゲルは皮肉にして描いた作品にも思われます。
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