ジョルジュ・スーラとともに点描描写による表現を確立し、新印象派と呼ばれたポール・シニャックのキャリア後半の作品「パリ、ポン・ヌフ」です。
ポン・ヌフとはパリに現存する最古の橋のことで、シニャックの他にルノワール、カミーユ・ピサロなど多くの画家が題材とした橋です。
当初、シニャックの作品はスーラの影響を強く受けた細かな点描による表現が多かったのですが、スーラが若くして亡くなった後は、大きめの点描による表現となり独自の作風へと発展させていきます。
また、暖色系の配色を多く取り入れるようになっており、クロード・モネの影響と言われています。
作品 パリ、ポン・ヌフ
シニャックのキャリア後半の作品で、大きめの点描と暖色系の配色を取り入れた作品となっています。
ポン・ヌフは、同時代のルノワールやピサロも描いていますが、二人とは違った視点からポン・ヌフを描いた作品となっています。
「パリ、ポン・ヌフ」
(1931年)
(参考)「ポン・ヌフ」(ピエール=オーギュスト・ルノワール)
(1872年)
(参考)「ポン・ヌフ」(カミーユ・ピサロ)
(1902年)
シニャックとピサロの「ポン・ヌフ」はひろしま美術館に所蔵されています。
本作品「パリ、ポン・ヌフ」はシニャックのキャリア後半の作風で特徴的な大きめの点描で描かれています。
画面中央付近に描かれている船の煙突から出ている煙が、空や河の寒色に対して、対比されています。
暖色系の煙と川に移っている煙により画面を左右に分けて、鑑賞者にとって対象物が多い画面左と対象物が少ない画面右側を整理しているような印象です。
また、煙は画面の対角線上に描かれており、川沿いの木々の緑と川の青色を対比しています。
反対の対角線では、船への積み荷などで働く人々と何もない空が対比しているようにも見えます。
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