ユディト・レイステル 「誘い」

絵画

ユディト・レイステルは17世紀のオランダ黄金期の女流画家で一般市民の肖像画などを描きました。

本作品「誘い」は当時、性的誘惑を題材にした作品が多く描かれたなかで、他作品とは全く反対の意味を意図した作品としてレイステルの作品のなかでも重要な作品とされています。

レイステルの多くの作品が、彼女の死後、フランス・ハルスの作品として誤って認識されていましたが、19世紀後半に正確に認識されるようになり再評価を受けるようになっています。

本作品はオランダのマウリッツハイス美術館に所蔵されていますが、美術館では「若い女に金を差し出している男」という作品名が付けられています。

作品 誘い(若い女に金を差し出している男)

本作品は、当時よく題材として制作されていた性的誘惑を描いた作品に対する女性画家としての目線から制作した作品と言われています。

特にオランダでは性的誘惑で金銭を得る様子を題材にした作品が多く描かれていました。

取り持ち女」(ディルク・ファン・バビューレン
1622年

1622年
ディルク・ファン・バビューレン
「取り持ち女」
ボストン美術館蔵(アメリカ ボストン)

取り持ち女」(ヨハネス・フェルメール
1656年

1656年
ヨハネス・フェルメール
「取り持ち女」
アルテ・マイスター絵画館蔵(ドイツ ドレスデン)

男女を仲介する老女や派手なドレスを着た女性などが描かれており、性的誘惑が肯定的に描かれている印象です。

本作品では、女性のドレスは落ち着いたデザインで肌も隠されています。

誘い
1631年

1631年
ユディト・レイステル
「誘い」
マウリッツハイス美術館蔵(オランダ デン・ハーグ)

裁縫をしている女性はランプに照らされた手元に集中しており、男性が差し出している金銭に全く興味を示していません。

女性の服装は地味で肌が出ているところがなく、上記の男性画家の2作品とは対照的です。

また、裁縫することは女性の仕事で美徳とされていました。

本作品では男女の描写のほか、明暗を対角線上ではっきりと分けて描写しておりランプに照らされる女性を強調している印象です。

作品上重要な男性と女性の表情、仕草は対角線上に配置されておりとても安定した構図とされています。

本作品では、女性の足元に足温器が描かれています。足温器は女性が既婚者であることを示しており、当時の他の画家の作品でもしばしば登場します。

牛乳を注ぐ女」(ヨハネス・フェルメール
1656‐1657年

1657‐1658年
ヨハネス・フェルメール
「牛乳を注ぐ女」
アムステルダム国立美術館蔵(オランダ アムステルダム)

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