19世紀初頭、産業革命がもたらした蒸気機関車は時代の最先端の象徴でした。
イギリス人画家ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーは、スピードを描く試みとともに、画面に様々なものを描き、当時の文化の新旧の対比を本作品で表現しました。
初めての鉄道を描いた作品
本作品は、はじめて鉄道を主題とした作品と言われています。
「雨・蒸気・スピード グレート・ウェスタン鉄道」
(1844年)
テムズ川に架かる鉄道橋を渡る蒸気機関車を極端な遠近法で描き、猛スピードで疾走して向かってくる様子を描いています。
① 実際には見えないはずのボイラーの火を機関車の前に描いて、力強さを強調しています。
② 古代様式のアーチを持つ橋と蒸気機関車が走る鉄橋と対比しています。
アーチを持つ橋の下には渡し船が描かれ、機関車と対比されています。
逃げるウサギ
絵具の退色により、ほとんど判別できなくなっていますが、機関車から逃げるように走るウサギが描かれています。
ターナーが発表前の最後に書き加えたもので、ウサギはスピードを表すシンボルとともに、人間の力が自然に及ぶ様子を描いたものと思われます。
雨の表現
右斜め上から左下方向にはしるいくつもの線は、吹き付ける雨を表しています。
雨の描写は非常に難しいとされ、ターナーは筆跡で表現しています。
一方、日本の浮世絵では、雨が線で表現しており、西洋の画家たちを驚かせました。
「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」
(歌川広重)
コメント