17世紀のオランダ黄金期の画家の一人ですが、ヨーロッパ中を旅してまわり、スペインでは騎士にも叙されたへラルト・テル・ボルフの作品「リンゴの皮をむく女」です。
他のオランダ黄金期と画家達とは違った丁寧な筆さばきで、特に布や衣類のひだや光沢などの描写は高い評価を受けています。
本作品「リンゴの皮をむく女」でも女性が羽織る上着やテーブルクロスは詳細に描写されています。
また、本作品にはオランダ黄金期の他の画家の作品同様、いくつかの寓意が表現されています。
作品 リンゴの皮をむく女
リンゴの皮をむいている女性は、へラルト・テル・ボルフの妹がモデルとされています。
「リンゴの皮をむく女性」
(1660年頃)
ローソクはついておらず、暗い部屋で女性がリンゴの皮をむいています。女性は黒い頭巾をかぶり悲し気な顔をしています。
黒い頭巾をかぶっているのは、女性が未亡人であることを示しています。
また、リンゴの皮をむく行為は、家事を行うのは主婦の美徳という当時の考えを表しているようです。
テーブルの上には、既に向かれた長い皮が置かれており、女性は家事が得意な事が伺えると同時に、女性が主婦としての使命を果たしていたことを示しています。
へラルト・テル・ボルフの他の作品同様、衣類やテーブルクラスの描写は詳細に描かれています。
(へラルト・テル・ボルフの他の作品)「手紙」
(1660-1665年頃)
リンゴの皮をむく女性の他、心配そうに女性を覗き込む少女が描かれています。
女性の悲し気な顔とは対照的で、豪華の帽子を被っていることから女性と対象的な子供の様子を強調しています。
画面構成では、少女のあどけない顔を中心に据えて、帽子のつばや女性と子供の視線などを対角線上に描写しており対角線で右下となる人物が描かれて空間に鑑賞者の視線を向けています。
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