19世紀後半から20世紀初期に神話や文学を題材にした作品を発表したイギリス人画家、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスは「シャロットの女」を題材に3バージョンの作品を制作しています。
シャロットの女とは、アーサー王伝説に登場する騎士ランスロットに報われない恋心を抱く女性のことで、塔に閉じ込められ鏡越しでしか外を見ることができないよう呪いをかけられた女性です。
鏡越しに外の世界を見て、その様子を織物で織る生活をしていたシャルロットは、外の世界を直に見ると死んでしまうのを承知で外を通ったランスロットを直で見てしまいます。
その後、死を覚悟したシャロットの女は、死んでしまうのならランスロットの傍で死にたいと船で塔を脱出します。
ウォータハウスは、物語のそれぞれの場面を作品として制作しました。
作品:シャロットの女
ウォータハウスが、シャロットの女を題材にした最初の作品です。
呪いにより死ぬこととなる彼女は、ランスロットの傍で死にたいと船で塔を脱出する場面を描いています。
3バージョンのシャロットの女のなかで一番有名な作品で、ウォーターハウスの代表作とされる作品です。
「シャロットの女」
(1888年)
シャロットの女の純白の服と背景の暗い色が対比されています。
船の先に吊るされたランタンは、もう少しで日が暮れてしまうことを表しており、ローソク3本のうち2本が消えてしまっていることで彼女の命が残り少ないことを表現しています。
作品:ランスロットを見つめるシャロットの女
塔に閉じ込められ、鏡越しにしか外を見ることが出来なかったシャロットの女が、死を覚悟して恋焦がれるランスロットを直接見る場面が描かれています。
「ランスロットを見つめるシャロットの女」
(1894年)
死を覚悟した女性の強い意志の顔が表現されています。呪いを破ったことで鏡が割れているのが描かれています。
毎日していた織物の糸が彼女に絡みついています。呪いに縛られている事が表現されていると言われています。
作品:影の世界にはもううんざりと、シャロットの女は言う
毎日、鏡越しに世界を見てその様子を織物で織っているシャロットの女を描いています。
織物の細かな描写まで表現されています。
鏡には楽しそうにしている男女が描かれています。
「影の世界にはもううんざりと、シャロットの女は言う」
(1915年)
ウォータハウスは、写実的描写を重視し、細部への描写にも最新の注意を払い作品を制作をするラファエロ前派の写実性に影響を受けた画家ともされています。
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