マニエリスム期のギリシア人画家で主にスペインで活躍したエル・グレコの作品「悔悛するマグダラのマリア」です。
マニエリスムを表現した最大の画家とも言われるエル・グレコはマグダラのマリア像を複数制作しており、現在は本作品も含めて5作確認されています。
マリア信仰が盛んなスペインで活躍していたことも影響しているかもしれません。
また、本作品はヴェネチア派の巨匠ティッツァーノ作「悔悛するマグダラのマリア」から最も影響を受けていると言われています。
作品 悔悛するマグダラのマリア
娼婦であったマグダラのマリアは、イエス・キリストに罪を諭され、改心した後、イエス・キリストに深い忠誠を捧げました。イエス・キリストの磔や復活に立ち会ったのもマグダラのマリアです。
マグダラのマリアを題材に多くの画家が作品を制作しましたが、現在最も典型的なマグダラのマリアの構図とされ、その後の他の画家の作品に影響を与えたのがティッツァーノの作品とされています。
「悔悛するマグダラのマリア」(ティツィアーノ・ヴェチェッリオ)
(1565年)
本作品「悔悛するマグダラのマリア」は、ティッツァーノの作品の最も影響を受けていると考えられています。
「悔悛するマグダラのマリア」
(1577‐1580年頃)
背景は崖で二分されて描かれ、マグダラのマリアが感傷的な表情で天を見上げている様子が描かれています。
ティツィアーノの作品ではマグダラのマリアが天を仰ぐ様子を顔と体が同じ方向にむいて描いて作品に安定感を与えているのに対してして、マニエリスムに強く影響されたエル・グレコは、マグダラのマリアの体をひねるような形で描写し長い首や手足で螺旋状な曲線の描写をしています。
また、ティツィアーノの作品の背景は豊かな土地なのに対して、エル・グレコの作品では荒野のような描写となっています。
エル・グレコの作品は、ティッツァーノの作品に比べ、体の表現や空の表現でより動きを印象付けるられる作品となっています。
女性がマグダラのマリアだと示すものとして、画中の左下に髑髏と香油壺が描かれています。
マニエリスムで描かれたマグダラのマリアに対して、香油壺に透けて髑髏を描写するなど写実的描写となっておりエル・グレコの写実的描写への自身の技術を示している作品ともなっています。
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