若い画家が多い印象派のなかで、仲間たちをまとめる重要な役割を担っていたカミーユ・ピサロの作品「リンゴの収穫 エラニー」です。
エラニーとは、パリから西北100Km程に位置する小さな村の名前で、ピサロは1884年から20年程住んでいた場所です。
ピサロは、エラニーに住んでいる間、エラニーの果樹園や農場、農民の暮らしなどを描いた作品を多く制作しており、本作品「リンゴの収穫 エラニー」もそのうちの一つです。
また、同時期に新印象派のポール・シニャックやジョルジュ・スーラと知り合い、彼らの点描描写に大きく感銘を受け、自身の作品も点描描写で制作していた時期でもあります。
作品 リンゴの収穫 エラニー
印象派の代表的画家であるピサロですが、キャリアの10年間ほどは点描描写に魅せられて、点描描写による作品制作を行っています。
本作品「リンゴの収穫 エラニー」も点描描写で描かれ、以前の作風とは異なるものとなっています。
「リンゴの収穫 エラニー」
(1888年)
印象派の筆触分割による表現から、より細かい筆触で表現しようと考えていたピサロは、点描で色彩を表現しようとしていたスーラやシニャックと出会い、感銘を受け点描描写で作品制作を始めました。
「グランド・ジャット島の日曜日の午後」(ジョルジュ・スーラ)
(1884‐1886年)
以前の作品と比較すると、表現方法が大きくかわっているのが分かります。
「リンゴの収穫 エラニー」では、点描描写により夕日に照らされる農場が色彩豊かに描かれています。
また、地平線と農場は丸みを帯びて描かれており、農場が広大なのがわかります。馬車も小さく描かれ遠くにいる印象です。
丸みを帯びた農場を背景に、リンゴの木と農作業する男女で三角形を構成しており、作品の構成に安定感を与えています。
また、三角形を構成するリンゴの木や人々は農場とは反対に直線的に描かれて、農場と対比されているようです。
10年程、ピサロは点描描写により作品制作を行いますが、作品制作に非常に時間がかかる一方で以前の作品よりも評価を得ることがありませんでした。
また、アトリエでの長時間の作品制作が必要なことから、印象派の特徴でもある戸外で自然の様子を描くことができず、ピサロは点描描写の限界を感じており、スーラの死を期に印象派へ回帰しています。
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