若い印象派の画家たちのなかで、最年長で画家たちのまとめ役でもあったカミーユ・ピサロの作品「羊飼いの娘」です。
本作品は「小枝を持つ少女」「座る農家の娘」と呼ばれることもあります。
ピサロは、当時の階級社会へ批判的な立場で、農村などで働く人々の様子を作品にすることが多く、本作品もその一つです。
また、本作品制作当時のピサロは、印象派の画風に限界を感じ、新印象主義と言われた点描描写への関心を示していた時期で、以前の作品からは少し描写が変化している作品と言われます。
作品 羊飼いの娘
主に風景画を描いていたピサロが人物画を描き始めた時期の一作で、労働者への共感をもっていたピサロが働く少女を描いた作品です。
「羊飼いの娘」
(1881年)
画面中心に羊飼いの少女を配置し、画面自体にあまり動きを与えず、少女を静かに佇んでいる印象を与えます。
筆のタッチは少し粗い印象を受けますが、より大地の感触と少女の素朴さを強調しているようです。
少女の青いスカートに対する赤い靴下と帽子が対象的配色となり画面にアクセントとなっています。
1880年代まで、ピサロは風景画を主に制作していましたが、1880年代に入り人物画を描き始めます。
本作品は人物画を描き始めた初期の作品です。
1870年代のピサロの風景画
「赤い屋根、ポントワーズのサン=ドニの丘、冬の効果」
(1877年)
また、人物画を描き始めるとともに、より配色を分割できる点描描写に関心を示しており本作品でも以前の風景画よりも粗い筆触など作風の変化の兆しが見えます。
ピサロの点描描写による作品「二人の若い農婦」
(1891-1892年)
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