バッロク絵画の巨匠ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオの比較的キャリア初期の作品「トカゲに噛まれた少年」です。
ちょうどカラヴァッジョが枢機卿デル・モンテの後援を受けることに成功した時期の作品で、彼の能力を示さなければならない時期の作品です。
また、本作品はカラヴァッジョの特徴である強い明暗対比が抑え気味で、その後の彼の画風への過渡期の貴重な作品とされています。
現在、同時期に制作された2点の作品が確認されています。
先品 トカゲに噛まれた少年
本作品は、2点現存しており、両作品とも同時期に描かれたことがわかっています。
「トカゲに噛まれた少年」(ロベルト・ロンギ財団蔵)
(1594‐1596年)
本作品のモデルに関しては、議論が続いており確定していません。
現在、一番有力な説は、他の作品でもモデルを務めているカラヴァッジョの友人で画家仲間のマリオ・ミンニーティという少年です。
マリオ・ミンニーティをモデルにした作品
「果物籠を持つ少年」
(1593年頃)
カラヴァッジョの自画像との説もあります。
本作品は、それまでのカラヴァッジョ作品が「果物籠を持つ少年」のように静止した状態の人物を描いていたのに対して、動きを描写した作品となっています。
それまでの自身の静止画から、一瞬の動きを表現しようとした作品としてその後のカラヴァッジョの技術の進歩の過渡期の作品として貴重とされている作品です。
一方、人物の動きの描写に対して、テーブルの上の花や花瓶の描写は非常に精密で技術の高さが示されています。
花瓶のなかの水が部屋の様子を反射している状況が描かれています。
本作品の構成は、ルネサンス期の女流画家ソフォニスバ・アングイッソラの「ザリガニに噛まれた少年」というスケッチから着想を得ていると言われています。
「ザリガニに噛まれた少年」
(1554年頃)
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