ルネサンス後の16世紀のイタリアで活躍、明暗対比を特徴としたバロック絵画の先駆け的画家ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオの作品「聖母の死」です。
当時、聖母マリアの死を描く場合は聖母被昇天のイメージと合わせ天に上る様子を描くのですが、カラヴァッジョは実際の遺体の描写を行い、現実味を帯びた場面としています。
宗教画としては異例なもので、人々も衝撃をうけた作品であったようです。
そのため、依頼主の教会からは受け取りを拒否されています。
後にルーベンスが自身の雇い主の貴族に本作品の購入を進め、その貴族が購入、一時保有しています。
作品 聖母の死
宗教画としては、現実的、人間的な描写を行い、当時の人々に衝撃を与えた作品です。
「聖母の死」
(1604‐1606年頃)
当時、聖母の死の描写は、聖母が天に上る様子を描く事が一般的でした。
(参考)「聖母被天昇」(ピーテル・パウル・ルーベンス)
(1625‐1626年)
カラヴァッジョは聖母の死をより現実的に一人の人間の死といった描写をしており、当時としては非常に異例です。
カラヴァッジョは娼婦をモデルに聖母の遺体を描いたと言われていますが、腹部が膨れていることから水死した娼婦をモデルにしたとも説も一部あります。
現在からも、聖母を描写した遺体とは言いずらいとても現実的な描写です。うっすらと聖母の頭上に描かれて光輪が聖母の神聖さを表現しているのみです。
聖母の遺体の前に座って、悲しみのあまり頭を抱え、身を掲げめているのはマグダラのマリアとされ、表情を描かないことでより悲しみを強調しています。
カラヴァッジョの特徴である明暗対比を用いながら、マグダラのマリアの首筋に一番の光がさしており、聖母の遺体から順に周りの人物に視線が行くよう工夫されています。
画面上部に描かれた赤い布の表現が、この場面が需要な場面であることを示しています。
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