印象派と同時代に活躍したギュスターヴ・モローの「出現」という作品です。
印象派の活躍により、宗教画や歴史画にあまり注目がいかなくなった状況で、モローは神話や聖書から主題をとり神秘的な作品を制作しました。
本作品は、聖書にある題材で、ファム・ファタル(運命の女)という、その後、多くの画家が題材として描く典型ともなっています。
作品の主題
作品の主題は新約聖書にあるエピソードで「ユダヤ王ヘロデの誕生日に舞を踊った継娘のサロメに、欲しいものを与えると王が約束し、サロメが洗礼者ヨハネの首を望んだ」というエピソードが主題です。
他の画家もこのエピソードを主題に作品を制作していますが、多くはヨハネの首をのせた盆をサロメがもっている様子が描かれています。
「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」
(1609年頃)
モローは、聖ヨハネの首をサロメの前の空中に出現させています。
一般的にサロメは母親である王妃のへロディアにそそのかされて、ヨハネの首を望んだとされていますが、モローはサロメ自身が望んだこととして表現しています。
「出現」
(1874-1876年)
ファム・ファタル
19世紀のロマン主義文学の題材として好まれ、絵画でも多く取り上げられるようになった「男性を破滅させる魔性性をもつ女性」のことを」ファム・ファタルと呼びます。
真っ先に浮かぶのは、アダムの妻のイヴで、禁断の果実の実を食べるだけでなくアダムにも進めることで、人類の運命をも変えてしまいます。
モローは、サロメを東洋的な女性ともとれる黒髪、異国風の装飾品で着飾った女性を描きファム・ファタルとして描いています。
ギュスターヴ・モロー
「自画像」
(1850年)
幻想的な作風で、印象派と同時代でありながら神話や聖書から題材をとり、作品を制作しました。
モローは、パリの国立美術学校の教授にもなりマティスなどの教え子を世に排出しています。
また、彼の屋敷は死後、ギュスターヴ・モロー美術館として公開されています。
コメント
[…] フランスの象徴主義の画家。聖書や神話に題材をとった幻想的な作風で知られる。弟子にマティスとルオーという2人の巨匠がいる。主な作品は『出現』。 […]