15世紀後半から16世紀前半に活躍したフランドル(現オランダ、ベルギー地域)の画家で北方ルネサンスとイタリア ルネサンスを融合させたといわれるクエンティン・マサイスの作品です。
マサイスはレオナルド・ダ・ヴィンチと親交がありよく素描などの交換をして、イタリアルネサンスの技法を習得、自身の作品に反映させていました。
また、レオナルド・ダ・ヴィンチもマサイスの素描を参考にして制作した作品もあります。
本作品「聖母子と子羊」はレオナルド・ダ・ヴィンチの「聖アンナと聖母子」から影響を受けて制作された作品で、北方ルネサンスとイタリアルネサンスの比較に重要な作品となっています。
作品 聖母子と子羊
本作品「聖母子と子羊」はレオナルド・ダ・ヴィンチの「聖アンナと聖母子」の構図とほぼ同じで聖母子の様子も同じ描写となっています。
「聖母子と子羊」
(1513年)
「聖アンナと聖母子」
(1508年)
構図は同じですが精密な描写が特徴的な北方ルネサンスの技法であるマサイスの「聖母子と子羊」の方がよりはっきりとした描写の印象を受けます。
レオナルド・ダ・ヴィンチは遠近法として背景の山々を意図的にぼんやり描いていますが、マサイスははっきりと描いています。
また、幼子イエス・キリストの描写はレオナルド・ダ・ヴィンチが意図的に表情の描写をしていないに比べ笑顔が描写されており、親近感を与えています。
レオナルド・ダ・ヴィンチは「聖アンナと聖母子」を終生手放すことがなかったことから、マサイスは素描などをレオナルド・ダ・ヴィンチから提供され、本作品「聖母子と子羊」を制作したと思われます。
両作品とも宗教画ですが、北方ルネサンスのマサイスの方がよりは対象をはっきりと描写し、レオナルド・ダ・ヴィンチの輪郭をぼやかすスフマート技法は採用しなかったようです。
そのことによりマサイスの聖母子像の方がレオナルド・ダ・ヴィンチの聖母子像と比べ神々しさは無いですが、より普通の母子のような印象を受けます。
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