フィンセント・ファン・ゴッホが精神を病みサン=レミの精神療養院で制作していた模写の一つで、ロマン主義を代表するウジェーヌ・ドラクロワの作品「善きサマリア人」の模写です。
ゴッホは、白黒の版画をみて模写しているため、ドラクロワのオリジナル作品とは左右が反対になり色も違うものとなっています。
本作品の前年にもゴッホはドラクロワの作品「ピエタ」を模写しており、2作目のドラクロワの模写となっています。
作品 善きサマリア人(ドラクロワによる)
善きサマリア人とは、新約聖書の中の話で、旅の途中に強盗に襲われたユダヤ人を他のユダヤ人が見て見ぬふりをしたのに対して、ユダヤ人から差別されていたサマリア人が助けると言う話です。
ドラクロワは、その話しを作品として1849年に発表しています。
「善きサマリア人」
(1849年)
ゴッホは、ドラクロワの補色の使い方を賞賛していたようで、「善きサマリア人」でも旅人を助けるサマリア人の赤い服に対して背後の緑が補色効果で、よりサマリア人が鮮やかに見える印象を与えています。
ゴッホは、ドラクロワの「善きサマリア人」の白黒の版画を見て模写しており、彩色は全く違っていますが、補色効果を意識しています。
「善きサマリア人(ドラクロワより)」
(1890年)
ゴッホはサマリア人の服を黄色、旅人の服を青色、背景も黄色と青色に分け補色効果を作品に与えています。
ドラクロワの作品は、強盗に襲われたユダヤ人の旅人をサマリア人が助け、馬上に上げようとしている場面を描いています。
ゴッホがこの作品を模写した際は、精神療養院で一年近く過ごしており、退院にむけて希望を抱いていた時期で、作品の題材に共感したため模写したとも言われています。
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