ルネサンス盛期初期のイタリア フィレンツェで活躍、当時フィレンツェで絶大な権力を誇っていたメディチ家に庇護、支援された画家サンドロ・ボッティチェッリの作品「書物の聖母」です。
本作品「書物の聖母」はボッティチェッリの代表作「春(ラ・プラマベーラ)」の前年に制作された作品で、ボッティチェッリらしい美しく、繊細で細部にこだわりを持って描かれている作品です。
また、本作品は作品中に細金細工や当時は青色を出すのに高価な材料であったラピスラズリが使用されているなど、注文主が不明ではあるものの、かなり裕福な注文主からの注文ということが分かっています。
作品 書物の聖母
本作品は、修復後に明るい色彩を取り戻してボッティチェッリの優美で繊細な描写技術をあらためて示した作品です。
「書物の聖母」
(1480-1481年)
作品には集中して書物を読む聖母とその聖母を見つめる幼子のイエス・キリストが描かれています。
聖母、イエス・キリストとも肌が光を反射しているように描かれ、表情も穏やかに描かれています。
二人の両手は、同じに配置されており右手は開き、左手は閉じて描かれ、イエス・キリストの左手には三本の釘と茨の冠が握られています。
将来のイエス・キリストの受難を表現していると言われています。また、これらはボッティチェッリがよりメッセージ性を強める為、後から書き加えられたと考えられています。
奥には果物が入った器が描かれており、入っている果物はサクランボ、プラム、イチジクでそれぞれ意味を持っています。
サクランボはキリストの血を意味し、プラムは愛情などを意味し、イチジクは復活を意味しています。
作品では細金細工が使用されており聖母子を神々しくする印象を与えています。
通常、このような高価な材料を使用する際は注文主からの依頼であり、契約で絵画の価格に含まれるため、注文主がかなり裕福な人物であったことが想定されます。
また、聖母の上着の青色は当時はとても高価であったラピスラズリが使用されていることが判明しており注文主はボッティチェッリにとってかなり信頼がおける人物であったことが分かります。
本作品は、ボッティチェッリの師匠であるフィリッポ・リッピの「聖母子と天使」からも影響を受け、制作されているとも言われています。
「聖母子と天使」(フィリッポ・リッピ)
(1465年)
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