ジャン=フランソワ・ラファエリは19世紀後半、印象派の画家達が活躍していた同時代に写実主義の作品で活躍した画家です。
エドガー・ドガが、印象派展へラファエリを参加させようとして、クロード・モネをはじめとした他の画家に反対し印象派が分裂するきっかけともなりました。
本作品「アブサンを飲む人々」は第6回の印象派展に出品された作品で、当初は「退役軍人たち」という作品名でした。
アブサンとは、当時、流行していた安価であるうえアルコール度数が高いお酒のことで、当時の画家たちが好んで飲み、題材にもしています。
作品 アブサンを飲む人々
ラファエリは、身近な人々の様子を写実的に描写する作品を制作、当時の若い印象派の画家たちが試みていた筆触分割による光の描写とは一線を画していました。
「アブサンを飲む人々」
(1880~1881年)
描かれている男性二人の表情は暗く、社会に希望もなく、昼からアブサンを飲んで過ごしている様子です。
男性の他、寂れた店の様子も細かく描写されています。
また、黒とグレーを基調とした画面の配色の中で、アブサンの緑色がアクセントとなっており、描写も意図的にクッキリと描かれています。
画面の中心に男性が手を添えるアブサンが配置されていることから、鑑賞者の視線を最初にアブサンに誘導しようとしている事が分かります。
アブサンから、暗く希望のなさそうな男性達、寂れた店の様子へと鑑賞者の視線を移動させ、当時の社会や人々の気持ちや様子を表現していると思われます。
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