18世紀 ロココ期のイギリスの画家でイギリス美術史のなかでも重要な画家とされるジョシュア・レノルズの作品「マスター・ヘア」です。
当時、イギリスでは絵画制作は外国人画家に頼っていたため、自国の画家を育てることが求められていました。
1768年、ロイヤル・アカデミーがロンドンに設立されると、レノルズは初代会長に選任されます。また、1784年には主席宮廷画家となりイギリス絵画の第一人者となりました。
レノルズはイタリアでラファエロやミケランジェロなど古典の研究を行い、ロイヤル・アカデミーの会長についた後は古典絵画の様式を重視した教育を行いました。
「自画像」(ジョシュア・レノルズ)
(1776年)
作品 マスター・ヘア
古典様式を重視したレノルズですが、本作品「マスター・ヘア」は当時では珍しい子供のみ肖像画です。
風俗画で子供を描くことはありましたが、子供の肖像画を描くことは少なく、また自然な子供の様子が描かれた本作品は、レノルズの作品のなかでも有名な作品です。
描かれているのは男の子で、当時10歳といわれています。モデルはフランシス・ジョージ・ヘアといわれる貴族の子供です。
当時は男子の生存率が女子より低かったため、幼児の時はよく男子は女子のような服装や髪形をしていました。
「マスター・ヘア」
(1788-1789年)
少年の白い肌に紅潮した頬の表現、自然体な体の動きの表現は少年の活発な姿を鑑賞者に印象付けます。
少年の金髪、腰に巻いた帯の茶色、背景にある木々の赤褐色が少年の白い肌と服と対比されているようです。
筆跡は大ぶりに描かれており、軽快さを作品に与えています。
背景の木々などは意図的にぼんやりとした描写とし、子供を際立たせています。
また、樹木の表現は暗く描き、明るく描写した少年と対比をしています。
レノルズは、ロイヤル・アカデミーで古典を重視した教育を行ったため時代認識が古い画家との評価を21世紀の最近までされていましたが、イギリスで画家を育成した貢献は大きいのと、本作品「マスター・ヘア」の作品のような優れ子供の描写など再評価されてきています。
コメント