サージェントはアメリカ人の画家ですが、イタリア フィレンツェで生まれ育ったこともあり主にパリやロンドンの画壇で活躍しました。
サージェントの最も有名な作品として「マダムXの肖像」があげられますが、そのモデルとなったのがヴィルジニー・アメリー・アヴェーニョ・ゴートローという女性で、本作品「ゴートロー夫人の乾杯」のモデルでもあります。
本作品「ゴートロー夫人の乾杯」は「マダムXの肖像」の一年前に制作され、目的も夫人の母親に寄贈するための作品ですが、「マダムXの肖像」への途上の作品とも見て取れます。
作品 ゴートロー夫人の乾杯
ゴートロー夫人の首周りの描写や長く伸ばした腕の描写は、後の作品「マダムXの肖像」をイメージできる描写です。
着ている黒のドレスは「マダムXの肖像」の際のドレスと同じもののようです。
「マダムXの肖像」
(1883-1884年)
「マダムXの肖像」の夫人と比べると「ゴートロー夫人の乾杯」の夫人はリラックスしているように見えます。
乾杯の相手(男性)はフレームの外に置かれ、鑑賞者に相手の様子を想像をさせています。
また、夫人の描写に対して、テーブルの上の花やランプは粗い筆跡で描かれ、鑑賞者への夫人の印象を強めています。
作品全体を暖色系の色で統一させ、夫人の頬を赤らめている描写など、当時、夫人が一般に持たれていた誘惑的な女性の印象を描いているようにも思えます。
社交界で有名なゴートロー夫人へは多くの画家がモデルの依頼をしていたようですが、彼女は断っていたようです。
ゴートロー夫人もサージェント同様にアメリカ人でありながらヨーロッパで育ち、ヨーロッパ社会での地位を得ようとしていたことからサージェントのモデルの依頼を受けたと言われています。
ゴートロー夫人の肖像写真
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