盛期ルネサンス期、ヴェネチア派の巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオのキャリア初期の代表作とされる「キルトの袖をつけた男の肖像」です。
「男の肖像」とも呼ばれることがあります。
本作品のモデルの男性には自画像との説も含め、様々な説が唱えられていますが確定しておらず、現在のところティツィアーノの最初の支援者であったバルバリーゴ家の者というのが有力とされています。
また、本作品は後のバロックの巨匠レンブラント・ファン・レインが鑑賞しており、自身の自画像にも本作品の様式を取り入れています。
作品 キルトの袖をつけた男の肖像
本作品「キルトの袖をつけた男の肖像」はヴェネチア派の巨匠ティツィアーノの初期の代表的作品として高い評価を受けている作品です。
「キルトの袖をつけた男の肖像(男の肖像)」
(1510年頃)
作品中の男性と鑑賞者を隔てるように欄干が描かれており、男性はその欄干に肘を載せて鑑賞者に視線を向けています。
欄干の描写は、上半身のみの肖像画を描く際の構図のバランスをとる手法として当時よく用いられた手法です。
ティツィアーノは青い袖を欄干の外にわずかに出すことで、鑑賞者に空間の一体感を与えてる効果をだしています。
また、ティツィアーノは服や影も利用して男性で三角形の構図をつくり、画面に安定感を持たせています。
欄干にはTとVの文字が描かれ、ティツィアーノ・ヴェチェッリオのイニシャルと考えられます。
モデルの男性は、自身に満ちた表情で鑑賞者に視線を向けており、高い地位の人間であることも分かります。
その辺りにも好感をもったのか、本作を鑑賞した後に、レンブラントも本作と同様の様式で自画像を描いています。
「34歳の自画像」(レンブラント・ファン・レイン)
(1604年)
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