盛期ルネサンス期のヴェネチア派の代表的画家ティツィアーノ・ヴェチェッリオの初期の作品です。
ヴェネチア派は、デッサンを重視してルネサンス美術の中心となったフィレンツェ派に対して、ヴェネチア周辺で活躍した流派で構図と色彩の調和などを重視した流派です。
ティツィアーノは、本作品と同じモデルで他の作品を何作か制作しています。
本作品でティツィアーノはフランドル地方起源でヤン・ファン・エイクの「アルノルフィーニ夫妻像」で描かれた凸面鏡をモチーフに描いています。
鏡の前の女性
「鏡の前の女」
(1515年頃)
本作品では鏡や女性の顔、胸などで表現された楕円形を作品中に多く配置、視線やテーブルの直線を利用して楕円と直線の調和をとった構図となっています。
楕円を螺旋のように配置した構図をとって直線でバランスをとったような構図です。
ティツィアーノは作品内に凸面鏡を描き鏡の中に窓と女性の後ろ姿が描かれています。
女性が手に持っているのは、当時ヴェネチアで一般的に使用されていた髪を脱色するためのローションと考えられています。
同じ女性がモデルの作品
当時は同じモデルで他の作品を描くことが一般的でした。
ティツィアーノのも同じ女性をモデルに数点作品を制作しています。
「フローラ」
(1515年頃)
「ヴァニティ」
(1515-1516年頃)
モデルの女性についてはいろいろな説はあるのですが、判明していません。
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