ルネサンス期の画家で師匠のティツィアーノとともに、ヴェネツィア派を代表する画家のティントレットの作品です。
新約聖書内のエピソードの一つで後に聖母マリアとなる幼女がエルサレム神殿に入り、その後、成人まで神殿内の聖なる場所で育てられたという物語を題材にしています。
このエピソードは多くの画家に描かれており、師匠のティツィアーノも描いています。
ティントレットは、他の画家がその場面を横から見た構図で描いているのに対して、下から見上げる構図でこの場面を描きました。
ティントレット「自画像」
(1588年頃)
作品 聖母の神殿奉献(しんでんほうけん)
本作品は教会のオルガンの外扉を飾るために描かれ、扉を閉じたときに一枚の作品となるように分割されて制作されました。
現在は、つなぎ合わせて一枚の作品として展示されています。
「聖母の神殿奉献」
(1550-1553年頃)
主役の幼女のマリアは小さく描かれていますが光が当たるにように描写されており、作品の主役で後に聖母となることが表現されています。
マリアの奥には高い塔の先端部分が描かれ将来、マリアが偉大な人物となることを暗示しています。
主人公は小さく描写されていますが、作品中の人物の動きや光の描写により鑑賞者の視線が幼女のマリアに集まるように工夫されています。
マリアは作品の中心より右側に配置されていますが、左側に配置された人々や下段の女性と子供の配置によりバランスがとられています。
それぞれ違う動きの3組の子供と女性のペアが描かれていますが、母親の慈愛を強調しているとされています。
ティツィアーノの聖母の神殿奉献
本作品の題材、聖母の神殿奉献は多くの画家たちが描いていますが、そのほとんどが横から見た構図でした。
ヴェネツィア派の巨匠でありティントレットの師匠でもあったティツィアーノも作品としてのこしています。
「聖母の神殿奉献」(ティツィアーノ)
(1534-1538年)
ティントレットは師匠のティツィアーノのほか、ミケランジェロの彫刻や古代の彫刻、建築にも影響を受け独自の画風を確立したと言われています。
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