18世紀に活躍したイギリスの画家で700点近い肖像画をのこしたトマス・ゲインズバラですが、本人は風景画を描くことを好んでいました。
肖像画はお金を得るためと割り切りつつ制作していたようですが、肖像画と風景画を同時に成立させようとした作品が「アンドリューズ夫妻の肖像」と言われています。
また、「アンドリューズ夫妻の肖像」は、肖像画でありながら家族や所有物などを一緒に描く゛カンバセーション・ピース”というジャンルの作品とされます。
.「自画像」(トマス・ゲインズバラ)
作品 アンドリューズ夫妻の肖像
本作品はゲインズバラが画家として独立間もない初期の作品で、イギリス東部の領主ロバート・アンドリューズから依頼を受け制作されました。
「アンドリューズ夫妻の肖像」
(1748-1749年)
左手にアンドリューズ夫妻を右手に広大な夫妻所有の農地を描いています。
二人は1748年に結婚、それぞれ広大な土地を所有する貴族でしたが結婚することでさらに領地が拡大しました。
作品中に描かれた土地はほぼ全て夫妻の土地だったようです。
夫妻の描写
結婚を記念して依頼された作品ですが、あまりフォーマルな様子ではなくラフな様子で描かれたようです。
夫のロバート・アンドリューズは狩猟用の服の胸のボタンをはずしており、リラックスした様子です。
ふくらはぎと猟銃は男性の象徴的表現ですが、ふくらはぎの曲線と猟銃の直線も対比されているようでうす。
また、犬が主人の方に顔を向けて描かれていますが、視線を夫妻の顔に誘導している役割も担っています。
一方、妻のフランシス・メアリ・アンドリューズは淡い青の服で頭や手足を小さく描きとても華奢な体格であるように描かれており、夫と対比されているようです。
未完の部分
妻の膝上の部分は未完のままとなっています。
後日、夫がとってきたキジを描く予定だった説、子供が生まれた際に赤ん坊を描く予定だった説と何かを描くために未完としていたようですが、最終的に未完のままとなってしまっています。
風家の描写
作品右手には夫妻所有の広大な土地が描かれています。
きちんと整備された農地と積まれた藁は作物が豊かだと表現されているようです。奥には羊が飼育されているのがわかります。
また、奥には夫妻が結婚式を挙げた教会が小さく描かれています。
作品の構図
本作品は、肖像画と風景画を融合させて作品として有名な作品で、ゲインズバラを名を広めた作品ですが主人公を左にもってくる配置は作品内のバランスをとるのが難しい配置です。
ゲインズバラは樫の木を使うことによりバランスをとったように考えられます。
樫の木を支点として左側に人物や物を描き、右側にスペースを大きく取り藁や木々を散りばめてバランスをとっているように見えます。
また、樫の木は安定や力強さを意味していることもあり、作品に描いたのかもしれません。
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