ポスト印象派で独特のタッチで作品制作をしたフィンセント・ファン・ゴッホの模写作品「赤ん坊を抱いた炉端の女」です。
ゴッホは、南仏アルルでのゴーギャンとの共同生活が破綻して後、精神を病みアルルから20kmほど離れたサン=レミの療養所に入療します。
療養所生活で外出も制限されていた為、ゴッホは療養所の部屋でいろいろな画家の作品を模写しています。
本作品は、ゴッホと同時期に活躍した女流画家ヴィルジニー・ドゥモン=ブルトンの作品を模写した作品です。
作品 赤ん坊を抱いた炉端の女
本作品はゴッホがサン=レミの療養所で療養して、ドラクロワやレンブラントなどの作品を模写していた時期に制作した模写作品です。
「赤ん坊を抱いた炉端の女」
(1889年)
元の作品はヴィルジニー・ドゥモン=ブルトンというゴッホと同時期の女流画家の作品です。
「赤ん坊を抱いた炉端の女」(ヴィルジニー・ドゥモン=ブルトン)
(1889年)
作品は、漁に出た漁師の夫の帰りを心配して待つ母子の様子を描いた作品で、「夫は海にいる」との作品名で呼ばれることもあります。
ゴッホは美術紙に掲載されていたドゥモン=ブルトンの作品の白黒写真を模写しました。
そのため、ゴッホの模写の配色は白黒写真からイメージしてゴッホが配色しており、オリジナル作品とは全く異なった配色となっています。
対角線上に配置された母親を境に明暗が付けられており、オリジナルでは炎から暖色が広がるような配色なのに対して、ゴッホでは寒色である青色を基調にして明暗の対比は強い印象を受けます。
対角線上の母親により暖色と寒色の対比が明確にされています。
作風による面もありますが、オリジナルの暖炉の炎の描写と比べると、明るさが小さく描写されており、明るさも暗く感じます。
漁師の夫を心配している妻の内心を炎に投影した配色を行ったのかもしれません。
南仏アルルでのゴーギャンとの共同生活が破綻し、精神を病んで療養していたゴッホも当時は寂しさを抱いていたと思われ、本作品を模写したのかもしれません。
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