17世紀のオランダ黄金期を代表する画家ヨハネス・フェルメールのキャリア中期頃の作品「手紙を書く女」です。
当時のオランダでは手紙を愛や恋の表現として多くの画家に題材とされており、フェルメールも手紙を題材に複数の作品を制作しています。(現在、確認されているのは6作品)
本作品は、他の手紙を題材としてフェルメール作品のなかでモデルが鑑賞者側に視線を向けている唯一の作品です。
また、作品中に登場する小物は繰り返しフェルメール作品に登場するものでフェルメールもしくは家族の所有物と考えられています。
作品 手紙を書く女
作品中の小物が繰り返しフェルメール作品に登場する物であることから、モデルもフェルメールの妻か近親者ではないかと考えられています。
また、当時、フェルメールがモデルを雇うほどの財政的に余裕がなかったとも考えられています。
「手紙を書く女」
(1665年頃)
白い毛皮で縁取られた黄色の上着は、フェルメールの他の作品で幾度も登場しておりフェルメールの財産目録にも記載されていたようです。
また、黄色い上着同様に青いテーブルクロス、宝石箱はフェルメールの「女と召使」で登場する物と同じものです。
「女と召使」
(1667-1668年)
当時、手紙は恋愛を表現する表現でしたが、楽器や音楽も同様に恋愛を表現する描写でした。
本作品の画中画にも弦楽器が描かれており、本作品の女性が恋文を書いていることを表現しています。
17世紀のオランダでは手紙を題材に多くの作品が制作されており、本作品と似たような構成の作品も多くあり、画家たちがお互いに影響しあったと考えられます。
「手紙を書く女」(ヘラルド・テル・ボルフ)
(1655年頃)
「手紙を読む女」(ハブリエル・メツ―)
(1665-1667年頃)
メツ―の「手紙を読む女」はモデルも女性が着ている黄色い上着が、フェルメールの作品のものと類似しています。
また手紙を題材としていませんが、フランス・ファン・ミーリスの「真珠を繋ぐ女性」との類似性も指摘されています。
「真珠を繋ぐ女性」(フランス・ファン・ミーリス)
(1658年)
コメント