オランダ黄金期の画家ヨハネス・フェルメールの最晩年の作品とされている「ヴァージナルの前に立つ女」です。
フェルメールの作品のなかでも部屋の中は明るく描かれ、作品「中断された音楽の稽古」や「窓辺で手紙を読む女」で描かれた画中画のキューピットも描かれ、作品中の女性が恋をしていることを表しています。
この作品は、「ヴァージナルの前に座る女」と対の作品と考えられています。
作品 ヴァージナルの前に座る女
本作品は、フェルメール最晩年の作品の特徴として、最盛期の彼の作品と比較して光の反射の表現が控えめで色の表現も原色の使用も控え、全体のイメージは柔らかくなっています。
「ヴァージナルの前に立つ女」
(1670-1672年)
フェルメールの他の作品同様、窓から日がさしていますが他の作品とは違い女性は日の光に背を向けており顔は薄明りの中にあるように描かれています。
また、女性の着ている服は1670年からオランダで流行し始めた服で、フェルメールの最盛期同様に精密に描かれています。首には真珠のネックレスが描かれています。
また、凝った衣装や身に着けているアクセサリーにより女性が高貴な人物であることがわかります。
作品の前景に描かれた誰も座っていない椅子は、待ち人を待っていることを表現していると考えれれています。
画中画のキューピット
本作品の中で描かれているキューピットは、恋愛の貞節を賞賛する寓意で「真実の愛はただ一人の人のためにある」という意味で当時人気のあった寓意画集の挿絵から着想されています。
キューピットは、フェルメールの他の作品にも登場しています。
1点は、当初フェルメール自身で塗りつぶされたと考えられていたキューピットの画中画が、他の別人に塗りつぶされたものと判明し、2019年から修復され2021年にその姿が現れた「窓辺で手紙を読む女」です。
「窓辺で手紙を読む女」
(1657-1659年)
もう一点は、キューピットの画中画が黒ずんでしまっていますが、「中断された音楽の稽古」です。
「中断された音楽の稽古」
(1660-1661年頃)
デルフト焼きタイル
フェルメールは生涯をオランダ デルフト過ごしましたが、デルフトでは焼き物が盛んで作品中にもデルフトで生産された焼き物が描かれています。
掃除などで床と壁の境などが傷むのを防ぐため、当時の家で床と壁の栄にタイルが備え付けられていました。
タイルには人やボートなどが描かれているようです。このタイルは、「牛乳を注ぐ女」にも描かれています。
「牛乳を注ぐ女」
(1658-1661年頃)
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