フランスのロココ期の代表的な画家ジャン・オノレ・フラゴナールの作品で、「空想的人物」という14点の連作のうちの一枚です。
モデルの女性は不明とされていますが、フラゴナールの妻の妹で弟子でもあったマルグリット・ジェラールではないかとの説も言われています。
X線調査で本作品は当初、モデルが鑑賞者側を向いた状態で描かれたことが判明しています。
作品 読書をする娘
フラゴナールは、本作品をはやく流れるような筆跡で描きながら、若い女性の表情やドレスの細部をやわらかいイメージで表現しています。
「読書をする娘」
(1769年頃)
背景もはやい筆跡で塗りつぶしています。女性の顔も基本的に流れるような筆跡ですが、読書に集中している様子が描かれています。髪も流れるような筆跡で綺麗に表現されています。
女性のドレスや背もたれのクッションは、筆跡と明るい色彩でとてもやわらい印象をうけます。
最初はこちらを向いていた
当初、フラゴナールは女性が顔を鑑賞者に向けたポーズで本作品を描いたことが分かっています。
フラゴナールがポーズを変更した理由は分かっていませんが、「空想的人物」という連作のなかで本作品だけモデル名が記載されておらず、人物が特定できないようにしています。
フラゴナールは、美術市場で本作品を売却するため、個人を特定させるのを避けるため横顔に変更したとも言われています。
よく見ると、娘の首の描写がいくらか不自然に見えますが、この変更の影響かもしれません。
「空想的人物」の14点の作品はどれも鑑賞者の方へ顔を向けたポーズで描かれているため、本作品が連作の一部ではないのではないかと言われていましたが、顔の向きを変えられた事が判明したため現在は連作の1作品とされています。
(空想的人物の1作品)「犬を連れた女性」
(1769年頃)
コメント