17世紀のオランダ黄金期のレンブラントと同時期に活躍したフランス・ハルスの作品「リュートを弾く道化師」です。
ハルスは、人物を描くことを得意とし大人数を描いたグループ肖像画から上流階級の人々の肖像画、そして本作品のような一般の人々の様子を描いた肖像画を描きました。
特に荒い筆跡で流れるように描かれた普通の人々の肖像画はハルス作品のなかでも特に有名です。
作品 リュートを弾く道化師
本作品のような半身のリュート奏者を題材にする作品は、イタリアで発祥したようです。
オランダ人画家のディルク・ファン・バビューレンによって「リュート奏者」という作品が制作され、リュート奏者の半身を描く題材が当時のオランダに紹介されました。
「リュート奏者」(ディルク・ファン・バビューレン)
(1622年)
バビューレンの作品のリュート奏者はリュートを弾きながら歌を歌っているため口を半開きの状態で描かれており、演奏に他の人物がかかわっていないようです。
また、正面からは描かれておらず、リュートを演奏する手の様子などは詳しくは描かれていません。
「リュートを弾く道化師」
(1623年)
ハルスの作品のリュート奏者は、左上に笑顔をむけており、歌手もしくは他の音楽家と演奏をしているようです。
ハルスの作品では、リュート奏者の顔に光が当てられ肌の色のコントラストや目が光を反射している様子が細かく描写されています。
また、演奏する手の様子やリュートも詳細に描写されています。
髪の描写は、作品に動きを持たせ、行われている演奏が楽しいものでる印象を受けます。
道化師の帽子の先にはハルスの署名が記載されています。
バビューレンによってイタリアからオランダにもたらされた半身のリュート奏者を題材として作品は、ハルスの他にもいろいろな画家が描きましたが、ハルスが本作品を制作後は、ハルス作品の影響が強くみられるようになります。
「セレナーデ」(ユディト・レイステル)
(1629年)
ユディト・レイステルはハルスの影響を強く受けた女流画家です。
「リュート奏者に扮した自画像」(ヤン・ステーン)
(1663‐1665年)
ヤン・ステーンの自画像もハルスの作品からの影響がみられると言われています。
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