17世紀バロック期のフランスを代表する画家二コラ・プッサンの作品です。
二コラ・プッサンはフランス人でしたが生涯の大半をローマで過ごしました。
当時のフランス国王のルイ13世は、既にローマで名声を得ていたプッサンに親書を送り、フランスへ呼び戻しますが、プッサンは2年ほどで再びローマに戻ってしまいました。
本作品の「アルカディアの牧人たち」は、プッサンが国王に呼び戻されてフランスに帰国する直前に制作された作品とされています。
作品 アルカディアの牧人たち
ニコラ・プッサンはバロック期の画家ですが、作風は古典主義的で本作品はフランス古典主義の代表作とも呼ばれており、フランス国王ルイ14世が購入し生涯、身辺に置いていたと言われています。
「アルカディアの牧人たち」
(1638-1640年頃)
アルカディアとは、ギリシャに古代からある地名ですが、16世紀のイタリアの詩人の作品「アルカディア」から牧人の楽園、理想郷の代名詞となっています。
中央にあるのは墓石で、墓石のまわりに1人の女性と3人の羊飼いが描かれています。
高貴な身なりの女性は、人間ではなく歴史の擬人化と考えられています。
墓石に記された銘文と羊飼い
牧人の楽園のアルカディアを表現するため3人に羊飼いが描かれています。羊飼い達は墓石の銘文を見て戸惑っているように描かれています。
墓石にはラテン語で「我もまたアルカディアにあり」という銘文が記載されています。
「楽園にも死は存在する」との意味と考えられ、古代からある警句「死を忘れるな」「死はどこにでも存在する」を表現していると考えられています。
プッサンは、同様の題材と題名で作品を描いています。
「アルカディアの牧人たち」
(1629-1630年)
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