17世紀 オランダ黄金期の画家ヘラルト・テル・ボルフの作品「手紙」です。
ヘラルト・テル・ボルフはヨーロッパ各地を旅してまわり、スペインでは騎士にも叙されています。
主に肖像画を制作して活躍した画家ですが、風俗画でも評価をえており、当時の上流階級の生活を詳細に描いています。特に衣類のひだや光沢の表現は特筆すべき能力と評価されています。
本作品「手紙」では、登場人物たちのうち2人はテル・ボルフの親類とされており、画面中の犬もテル・ボルフが実際に飼っていた犬と言われています。
作品 「手紙」
本作品の登場人物は、手紙を読む女性、トレイを持った少年、手紙を書いている途中のような女性の3人です。
光が良く当たっている手紙を読む女性が主人公であることが分かります。
「手紙」
(1660‐1665年)
作品中に登場する人物の他、小物まで詳細に描かれています。
主人公といえる手紙を読む女性の衣服の描写は非常に細かく、ドレスの質感までわかるような描写です。スカートの裾の刺繍まで描かれており、当時の作品のなかでも珍しいほどの詳細な描写です。
女性のドレスの他、シャンデリアや机の上の小物の描写まで詳細に描かれています。
本作品に描かれている3人の登場人物たちの関係性は作品中では特に判別できるような物は描かれておらず、その判断は鑑賞者の推測に委ねられています。
当時の絵画では手紙や犬は恋愛の寓意として描かれており、本作品も恋愛に関連する意味合いを鑑賞者に抱かせていますが、どのような意味をもっているかは、はっきりとはしていません。
少年も座っている女性も手紙を読んでいる女性の反応を気にしている様子が描かれており、手紙の内容が女性にとって大事なことなのが分かります。
テル・ボルフは親類や知人をモデルに作品を制作することが多く、本作品の手紙を読んでいる女性は妹、トレイを持って女性に顔を向ける少年は弟と考えられています。
また、眠っている犬も、テル・ボルフ自身が所有していた犬を描いています。
登場人物たちとは対照的に犬は手紙に無関心で、静かに寝ているのが印象的です。
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