スペイン黄金期の巨匠ディエゴ・ベラスケスがマドリードに出て宮廷画家となる前に制作した彼のキャリア初期の作品「東方三博士の礼拝」です。
ベラスケスの初期の作品は明暗対比が強い作風で、本作品も明暗対比で登場人物が強調されています。
誕生したイエス・キリストに敬意を表して三人の博士(王)がイエス・キリストを訪ねるという話ですが、ベラスケスは自身の身近な人物をモデルに作品を制作しています。
宗教画ですが、身近な人物をモデルにすることで神々しさよりも写実的な表現として、人々に聖書の物語をより身近に感じるように制作されていると言えます。
作品 東方三博士の礼拝
本作品では、対角線上に主要人物が配置されています。
「東方三博士の礼拝」
(1619年)
聖母マリア、幼子のイエス・キリスト、三博士の一人メルキオールが対角線を構成しており、その対角線に向け光がさしている描写がされています。
特に幼子のイエス・キリストが強調されています。
本作品の主要な登場人物はベラスケスの身近な人物と自身がモデルとして描かれたとされています。
聖母は本作品制作の前年に結婚したベラスケスの妻でイエス・キリストは生まれたばかりの自身の娘がモデルです。
聖母とイエス・キリストに跪いている博士(王)はベラスケス本人とされています。
ベラスケスの隣にいる年老いた博士(王)はベラスケスの師匠であり妻の父親でもあるフアナ・パチェーコです。
他の登場人物のモデルは定かではありませんが、聖母の横にいる男性はマリアの夫の聖ヨセフとされています。
三博士のもう一人の背後から様子を見ている若い男性は、本作品を見ている鑑賞者の姿を描写しているようにも見えます。
本作品は祭壇画として制作されイエスズ会が所有していました。
師匠であり義父であるパチェーコはイエスズ会と密接な関係をもっていたことが分かっており、ベラスケスも同様にイエスズ会と関係を持っていたことが推測されています。
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