スペイン絵画の黄金期の画家でスペインを代表する画家ディエゴ・ベラスケスの作品で、作品の中に2つの場面が描かれています。
ベラスケスの晩年の作品で、長い間織物工場で働く女性たちを描いた作品と考えられていましたが、ギリシャ神話のアラクネの寓話をテーマにした作品であることが分かっています。
また、作品中の画中画はティツィアーノ、ルーベンス由来の作品が描かれ、二人の織女たちの構図はミケランジェロの作品から着想をえて描かれています。
アラクネの寓話
ギリシャ神話の一つでアラクネという機織の名手の女性が、その自信から知恵、工芸、戦略を司る女神アテナに織物競争を挑み、その際に織り上げた図柄が女神アテナの怒りをかってしまい、蜘蛛の姿に変えられてしまった話です。
アラクネはギリシャ神話の神々の身勝手な行動を織物の図柄にしたのですが、その中には全知全能の神ゼウスがフェニキアの王女エウロペを略奪する話しである「エウロペの略奪」もありました。
素晴らしい織物を織ったアラクネですが、その織物の図柄は神々を批判するもので、アラクネは子孫まで織物をするよう蜘蛛の姿に変えられてしまったという話です。
「エウロペの略奪」
(1559-1562年)
画中画のエウロペの略奪
本作品の中には画中画として「エウロペの略奪」が描かれています。
「アラクレの寓話(織女たち)」
(1657年頃)
本作品は、奥に舞台のようなな場面、前面に織物をする女性達が描かれています。
奥の舞台にタペストリーとして描かれているのが「エウロペの略奪」とされています。
ただし、ティツィアーノの「エウロペの略奪」ではなく、ルーベンスがティツィアーノの作品を模写した「エウロペの略奪」ではないかと言われています。
ルーベンスはティツィアーノを尊敬しており、模写を何作か残しています。
「エウロペの略奪」(ルーベンスによる模写)
(1628年)
織女の構図
本作品はアラクネの寓話をモチーフにしており、前面に描かれている織物をする女性二人がアラクネと女神アテナです。
右側のこちらに背を向けているのがアラクネ、左側の年配の女性が女神アテナとされています。
神話では女神アテナは老婆に姿を変えて、アラクネの挑戦を受けています。
二人の構図は、ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画から着想されていると言われています。
ベラスケスは本作品のなかにティツィアーノ、ルーベンス、ミケランジェロといった巨匠たちの要素を取り込みました。
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