エドゥアール・マネに師事し、一方でマネに反対された印象派展への出品を積極的にした印象派を代表する女流画家ベルト・モリゾの代表作「ゆりかご」です。
「ゆりかご」は、第一回印象派展に出品された作品で、他の画家の作品が批判されるなかでも評価得た作品でした。
作品に描かれているのは、姉のエドマとエドマの二人目の娘ブランシュです。
姉エドマはベルト・モリゾと共に画家の道を志していましたが、結婚・出産を期に画家の道をあきらめています。
そんな姉を画家としての活躍を目指す妹が描いた作品です。
作品 ゆりかご
本作品「ゆりかご」は結婚・出産を期に画家をあきらめた姉が自分の娘をいつくしむように見ている様子を描いています。
「ゆりかご」
(1872年)
本作品には姉エドマとその赤ん坊が描かれていますが、赤ん坊を薄いベールで包まれたゆりかごの中に描くことで、赤ん坊の存在感を薄め、姉エドマへ鑑賞者の視線が行くようになっています。
当時、母子の描写で母親と子供に存在感の強弱をつけることは珍しく、かつ母親を強調することは非常に珍しい描写でした。
それまで風景画を多く描いていたベルト・モリゾですが本作品「ゆりかご」を期に母子の描写を多く描くようになります。
また、本作品を師匠であるマネに反対されていた印象派展へ出品するなど、ベルト・モリゾにとって画家として転機とする作品だったようです。
姉エドマの背後に描かれている透明感のあるカーテンは、印象派的な描写で柔らかい光の反射を描いており、おだやかな空間を印象付けます。
本作品はいろいろな解釈がされており、母親である姉エドマがあたたかく娘を見守っている様子の描写であるという解釈の他、結婚・出産を期に画家の道をあきらめた姉が原因の一つである娘をあきらめの気持ちで見ている様子などの解釈もされています。
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