印象派の女流画家で代表的なベルト・モリゾの作品「夏の日」です。
モリゾは、キャリア前半は師事していたエドゥアール・マネのモデルを度々務めるなどマネの影響を強く受けていました。
しかし、キャリア後半となるマネの弟と結婚、一人娘を授かった後は自身の家族を描くことが多くなり画風もマネの影響から脱したような画風となります。
本作品「夏の日」は家族を描いた作品ではありませんが、モリゾのキャリア後半の画風の特徴である流れるような粗い筆跡で画面に動きがある画風が確認できます。
特に印象派の画家たちが好んだ水面の描写は他の印象派画家とは違う表現となっています。
作品 夏の日
ベルト・モリゾが結婚後に一時期、ブローニュの森の近郊に住んでおり、散歩などでブローニュの森を良く訪れており、その森でボート遊びをする女性二人を描いた作品です。
「夏の日」
(1879年)
当時、鉄道などが発展し始め、パリ市民が郊外に出てボート遊びなどすることが流行していました。
本作品もそのような人々を描いた作品です。
描かれているモデルの女性は確かではありませんが、服装から上流階級の女性であることが分かります。
本作品でモリゾは白の彩色を利用して水面の様子を描いており、他の印象派の画家とは違う水面描写をしています。
また、粗い筆跡は水面の流れを感じることが出来ます。
(参考)「ヴィルヌーヴ=ラ=ガレンヌの橋」(アルフレッド・シスレー)
(1872年)
(参考)「アルジャントゥイユのレガッタ」(クロード・モネ)
(1874年)
画面右に水面を進む水鳥を描くことで、緑の背景のアクセントとして配色した女性の服や帽子のリボン、日傘との画面上でのバランスを取っているように思えます。
本作品のモリゾの画風はキャリア前半のマネの影響を受けた画風から大きく変わり、キャリア後半の流れるような粗い筆跡で描かれていることが分かる作品です。
「モリゾ夫人とその娘ポンティヨン夫人」(ベルト・モリゾのキャリア初期の作品)
(1869-1870年)
コメント