新印象派の画家でジョルジュ・スーラとともに点描描写を確立したポール・シニャックのキャリア後半の作品「ヴィネツィア、大運河」です。
「大運河(ヴィネツィア)」と呼ばれることもあります。
クロード・モネの作品に感銘を受けて印象派的な作品を制作していたシニャックですが、ジョルジュ・スーラの点描描写に強い感銘を受け、同様に点描描写による作品制作を始めます。
スーラの作風に強く影響を受けた作品を制作していたシニャックですが、スーラが若くして亡くなると、その影響からはなれ、独自の作風を確立していきます。
本作品「ヴェネツィア、大運河」は、ロンドン滞在中に鑑賞したウィリアム・ターナーの色彩に影響を受けた作品とされています。
作品 ヴィネツィア、大運河
シニャックのキャリア後半、スーラが亡くなった後に独自の作風を確立し始める時期の作品とされています。
「ヴィネツィア、大運河」
(1905年)
ジョルジュ・スーラに強く影響を受けていた時期は、忠実な点描描写を実施、色彩も色と色が交じり合わないことを強調した原色に近い色彩となっていました。
(参考)「井戸と女性」(ポール・シニャック)
(1892年)
しかし、スーラが亡くなった後、シニャックは独自の作風での描写を試み、本作品の様な大きめの筆跡で作品を制作するようになります。
点描ではなく、切り絵のような印象を受ける描写です。
また、色彩も大きく変わっており、当時滞在していたロンドンで鑑賞したターナーの影響を受けているとされています。
(参考)「解体されるために最後の停泊地に曳かれてゆく戦艦テメレール号、1838年」
(ウィリアム・ターナー)
(1838年)
空の描写などは、幻想的な表現となっており、影響が伺えます。
幻想的な空の表現に対して、対面には強めの色彩でボートや漕ぎ手を描写して対比しているとともに大聖堂の屋根と手前のポールの先が対比されています。
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