印象派の分割筆触をさらに発展させ、色の点で作品を制作する点描表現による新印象派主義の画家ポール・シニャックの作品「朝食」です。
シニャックの作品のなかでは数が少ない人物画作品で自身の祖父と母親を描いています。
シニャックの実家は裕福な馬具商人で作品に描かれている家族も上流階級の人々であることが分かります。
シニャックは、クロード・モネの影響を受けて印象派的な作品を描いていましたがジョルジュ・スーラに出会い、彼の作品を見て点描表現に魅了され、自身も点描表現での作品制作を始めます。
作品 朝食
シニャックが自身の祖父と母親をモデルに上流階級の朝食の様子を描いた作品です。
点描で暖色と寒色の補色による配色が分かりやすい作品です。
「朝食」
(1886‐1887年)
画面手前の男性がシニャックの祖父、奥でカップを手に持っているのがシニャックの母親です。
自身の上流階級の家族の朝食の様子を描いた作品で、穏やかな時間の印象を受けますが、人物同志がお互いに興味がなく、会話もないような寂しい印象も受けます。
母親の表情は、窓から差し込む日の光により表情が分からないような描写としています。
画面全体は陽が部屋を照らす様子と共にカーテン、壁紙は赤やオレンジの暖色と、家政婦のエプロン、テーブルクロスなど青色を基調にした寒色の補色関係がはっきりと対比されています。
補色関係の対比を強調するように寒色のテーブルの上に暖色の瓶が置かれています。
自身の家族の他に描かれている家政婦の描写は、シニャックが大きく影響を受けたスーラの代表作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」に描かれている女性を思い起こさせます。
「グランド・ジャット島の日曜日の午後」(ジョルジュ・スーラ)
(1884‐1886年)
本作品「朝食」は上流階級の朝食の様子が描かれていますが、お互いに興味を示していないような描写です。
同じく当時の上流階級出身のエドゥアール・マネやギュスターヴ・カユボットが描いた作品にも同じような印象を与える作品があり、当時の上流階級家族の一般的な食事風景なのかもしれません。
「アトリエでの昼食」(エドゥアール・マネ)
(1868年)
「昼食」(ギュスターヴ・カイユボット)
(1876年)
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