ポスト印象派で近代絵画の父とも呼ばれるポール・セザンヌのキャリア初期の作品「アシル・アンプレールの肖像」です。
アシル・アンプレールは、セザンヌと同郷で友人でもあった画家です。生まれつき背骨が曲がった障害を負っていたため体も小さかったようです。
アシル・アンプレールの写真
本作品ではセザンヌはアシル・アンプレールの名前アンプレール(Emperaire)を皇帝(Imperator)として皇帝の肖像画のような構図で描いています。
作品 アシル・アンプレールの肖像
本作品は、セザンヌが友人で画家のアシル・アンプレールを描いた肖像画で、大きな椅子を玉座に見立てて皇帝の肖像画のような構図で描いています。
「アシル・アンプレールの肖像」
(1867-1868年)
セザンヌはナポレオンにつよく興味をもっていたようで、本作品は、新古典主義の巨匠ドミニク・アングルの「玉座のナポレオン」から影響を受けていると考えられています。
「玉座のナポレオン」(ドミニク・アングル)
(1806年)
アシル・アンプレールの名前アンプレール(Emperaire)を皇帝(Imperator)として、アシル・アンプレールを玉座に座る皇帝のように描いています。
作品の上部には「アシル・アンプレール、画家」との題名が記されており、皇帝の肖像画を模した意図が感じられます。
ドミニク・アングルの「玉座のナポレオン」では、皇帝ナポレオンは正面を直視していますが、本作品のアシル・アンプレールは左斜め下を見つめて疲れた表情のように見えます。
一方で、アシルは自身の画家としての成功に対して強い気持ちでいたようで、疲れた表情の中にも強い意志をもっている印象も受けます。
アシルが座っている玉座にみたてた椅子は、セザンヌが自身の父親を描いた「「レヴェヌマン」紙を読む画家の父」にも登場しています。
「「レヴェヌマン」紙を読む画家の父」
(1866年)
太い輪郭で描かれている本作品は、当時の印象派の画家仲間たちとは既に違う様式を目指していたことが感じられる作品です。
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