ルネサンス期の画家アンドレア・マンテーニャの作品で短縮法でイエス・キリストの遺体を描いた作品です。
イタリアのルネサンスは都市ごとに独自の発展をしており、フィレンツェ派やヴェネチア派などがあり、マンテーニャはヴェネチアと同じ州にあるパドヴァ市のパドヴァ派の代表的な画家とされています。
マンテーニャはイエス・キリストが磔にされた際に手と足に打ちつけられた釘の跡を描き、聖書の悲劇的場面を、当時の最新の画法である短縮法で描いています。
作品 死せるキリスト
「死せるキリスト」
(1480年頃)
作品の左で悲しんでいるは、聖母マリアと聖ヨハネと聖母マリアの奥に口元だけ描かれたマグダラのマリアとされています。
三人の描写は聖人の描写として美化された描写ではなく、深く皺が描かれておりより悲劇性が強調されています。
イエス・キリストの頭の横には壺が描かれ、遺体に香料が塗られていることを示しています。
実験段階の遠近法
マンテーニャは、当時の最新画法であった短縮法で本作品を描いています。
一番手前にある足は、身体で一番大きく描かれるはずですが、そう描かれていません。
足よりは、頭の方が大きく描かれ、手も長く描かれています。
しかし、鑑賞者にとっては悲劇的な死を遂げたイエス・キリストの遺体をリアリティをもって認識できる描写であり、その後の遠近法の発展にも一石を投じた作品となりました。
また、イエス・キリストの手足の釘の後の描写や遺体の変色した様子の描写はマンテーニャの写実への技術の高さが示されています。
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