17世紀 バロック期のスペイン絵画を代表する画家バルトロメ・エステバン・ムリーリョの風俗画「犬を連れた少年」です。
ムリーリョは、スペイン セビーリャで生まれ画家として活動します。セビーリャは1649年に流行したペストの影響もあり経済的に疲弊していました。
ムリーリョは、宗教画での幼子イエス・キリストや天使なども含めて子供を描いた作品を多くのこしています。
特に経済的に疲弊したセビーリャで最も犠牲となってしまった街中の子供たちの様子を多く残しています。
作品 犬を連れた少年
本作品は、バロック期に流行した強い明暗対比ではなく控えめな対比におさえて、少年の笑顔の様子を合わせて柔らかい印象を与えれる作品となっています。
「犬を連れた少年」
(1655‐1660年)
ムリーリョ自身も幼い頃に両親を亡くしていたようで、また、自身の子供も6人中5人がペストで早くに亡くなるなど、子供には特別な気持ちがあったと思われます。
本作品の少年の笑顔もとても自然です。宗教画全盛の時代で街中の子供の様子を描く画家は少なかったようですが、自身の経験からもムリーリョは多くの街中の子供を描いています。
画面の構成は、少年の顔を中心を対角線上に描き、犬の視線や少年の視線を交わらせて構成上安定感がある構成としています。
本作品は「花と果物を持つ少女」という作品と対の作品となっており、現在確認されているムリーリョ唯一の対の作品とされています。
「花と果物を持つ少女」
(1655‐1660年)
子供への愛情ある作品を多く制作したムリーリョの代表作「無原罪の御宿り」は、自身の6人目の子供で耳の不自由な娘がモデルとされています。
「エル・エスコリアルの無原罪の御宿り」
(1660‐1665年頃)
コメント