ルネサス期の巨匠ラファエロ・サンティは生涯結婚することはありませんでしたが、若く、才能があり容姿も良かった彼は女性に人気があったようです。
ラファエロには、ローマ出身のパン屋の娘マルゲリータ・ルティという恋人がおり、彼女をモデルに「システィーナの聖母」などの作品が描かれたと考えられています。
ラ・ヴェラータ(ヴェールを被る婦人の肖像)
「ラ・ヴェラータ」
(ヴェールを被る婦人の肖像)
(1516年)
ラファエロが恋人のマルゲリータ・ルティをモデルに制作された作品と言われています。
別の説ではラファエロの理想とする女性像で聖人として描かれたとの説もあり、モデルは確定はしていませんが、ラファエロの描いた女性像のなかでも美しい作品の一つです。
本作品の女性は、ベールを被っていることから既婚者として描かれ、髪の真珠の飾り物や首のネックレス、金の刺繍がある衣類から社会的地位の高い女性として描かれています。
マルゲリータ・ルティをモデルとした場合、彼女はパン屋の娘で一般庶民なので、ラファエロは意図的に社会的地位が高い女性として描いたとも考えられています。
ラファエロは既に高い社会的地位も得ていました。当時の社会では身分の違いは結婚に大きな障害となっていました。
また、ラファエロは本作品では光の反射を重点に描いており、腕の衣装の膨らみはとても精密に描かれています。
ラ・フォルナリーナ(若い女性の肖像)
「ラ・フォルナリーナ」
(若い女性の肖像)
(1518-1519年)
モデルは、「ラ・ヴェラータ」(ヴェールを被る婦人の肖像)の同一人物と考えられており、マルガリータ・ルティとの説が有力です。
作品名の「フォルナリーナ」とは「パン屋の娘」と言う意味です。
1520年ラファエロの死後、工房に残されていた作品を助手が修復して売却したようです。
女性の左腕には、「ウルビーノのラファエロ」との署名が記載されて腕章を付けています。
「ラ・ヴェラータ」「ラ・フォルナリーナ」の両作品とも、ラファエロが早い段階から参考にし技術等を取り入れていたレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」と同じポーズで描かれています。
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