印象派の代表的画家ピエール=オーギュスト・ルノワールのキャリア初期の作品「オダリスク」です。
「アルジェの女」とも呼ばれることがある作品です。
オダリスクとはオスマン・トルコ帝国の後宮で使える側室、女官(女性奴隷)のことを指します。
ルノワールは、ロマン主義の巨匠ウジェーヌ・ドラクロワの作品「アルジェの女たち」のオリエンタル世界の描写とその色彩に強く感銘をうけていました。
本作品「オダリスク」は、ドラクロワの「アルジェの女たち」へのリスペクト、オマージュとして本作品を制作したと思われます。
作品のモデルを務めているのは、ルノワールの当時の恋人リーズ・トレオとされています。
作品 オダリスク(アルジェの女)
ルノワール自身はアルジェリアを訪れたことはなく、さらにトルコや他のオリエンタル世界へも訪れたことはありません。
ドラクロワの「アルジェの女たち」の他に、当時パリで取得できたオリエンタル世界の情報やイメージから制作したと思われます。
「オダリスク(アルジェの女)」
(1870年)
ルノワールは、ドラクロワの「アルジェの女たち」で描写したオリエンタル世界に強く感銘を受け、本作品を制作したと言われています。
「アルジェの女たち」(ウジェーヌ・ドラクロワ)
(1834年)
女性が着ている服の柄はオリエント世界を印象付けるとともに、その筆跡による服の質感や色彩表現は、後のルノワールの表現に続くものとなっています。
また、女性が男性を誘うような表情は、ドラクロワの「アルジェの女たち」以上に性的な印象を与えています。
モデルは、当時恋人だったリーズ・トレオという女性です。ルノワールはリーズ・トレオをモデルに数点作品を制作していますが、他の作品のリーズ・トレオとは全く違う印象を本作品では表現しています。
「日傘のリーズ」
(1867年)
「夏・習作」
(1868年)
本作品の背景では、筆跡を強く意識した表現がおこなわれており、その後のルノワール作品の特徴となる表現が見られます。
ルノワールは、本作品の二年後にも同様の題材で「アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)」という作品を制作しています。
「アルジェリア風のパリの女たち」
(1872年)
「オダリスク(アルジェの女)」でモデルを務めた恋人リーズ・トレオは既に別の男性と結婚しており、別の女性たちが描かれています。
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