ルネサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチのキャリア初期の作品で、現在では、師匠であるアンドレア・デル・ヴェロッキオとの共作であることが判明しています。
また、レオナルド・ダ・ヴィンチの油彩作品のなかでも最大の作品とされています。
キャリア最初期の作品ですが、遠近法などその後のレオナルド・ダ・ヴィンチの作品制作への姿勢が見られます。
天使ガブリエルの羽
レオナルド・ダ・ヴィンチは写実的な描写を目指し、それまで黄金などで描かれてい天使の羽を実際に空を飛んでいる鳥の羽を模写しました。
現在の作品の天使ガブリエルの羽は他の画家により、長く描きかえられてしまってしまっています。
レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた天使の羽
現在の天使ガブリエルの羽
(他の画家が手を加えたもの)
空気遠近法
遠近法はルネサンス期に発明され、その後の絵画に大きな影響を与えましたが、レオナルド・ダ・ヴィンチが提唱したものとして空気遠近法があります。
空気遠近法とは「遠くのものは色が変化し、境界線がぼやける」というもので、本作品でも既に実践が試みられています。
作品:受胎告知
「受胎告知」
(1472-1475年)
レオナルド・ダ・ヴィンチのキャリア最初期の作品のため、技術にはまだ未熟な面が見られると言われています。
背景の糸杉に変化がなく描かれていたり(両端の杉が小さくなるはず)、聖母のマリアの手の描写(不自然に長く描かれている)などが指摘されています。
ユリと壁の描写
本作品では、現在でも謎としている一部の描写があります。
天使ガブリエルの顔の付近にユリが描かれています。通常、聖母マリアの処女性を表現するためユリのおしべは描かれないのですが、レオナルド・ダ・ヴィンチはおしべを描いています。
また、同じく聖母マリアの処女性、純潔性を表現するため閉じられた部屋や塀で描かれるのですが、本作品はユリと同じところで塀が途切れています。
レオナルド・ダ・ヴィンチの意図は、現在でも判明していませんが、カトリック教会への反発から描いたものではないかとも言われています。
コメント