オランダ黄金期の画家でバロックの巨匠レンブラント・ファン・レインの自画像作品です。
レンブラントは約40年のキャリアのうちで約90点ほどの自画像を制作しており、現在確認されているレンブラントの全作品の10%が自画像となっています。
レンブラントの自画像は、彼自身の年齢とともに変貌を遂げており、特に晩年の自画像は作品の完成度よりも表現性を重視した作風となったと言われています。
「二つの円と自画像」も部分的には粗い完成度の部分がありながらも自身の才や技術を表現しているような自画像として評価されています。
本作品は「円弧のある自画像」とも呼ばれています。
作品 二つの円の自画像
本作品の背後に描かれている二つの円については、描かれた目的や理由はまだはっきりと判明されておりません。
「二つの円と自画像」
(1665-1669年)
暗号めいた大きな二つの円は本作品全体を謎めいたものにしています。円の目的や理由については多くの説が唱えられています。
一説には当時の世界地図や天体図にも同様の円が描かれたことから現世の象徴とも言われていますが、正確な事は全く分かっておりません。
表情と体の表現
本作品は画家の晩年の4年間に描かれた4点の自画像の1点で、晩年のレンブラント作品での特徴が多く含まれており、晩年の代表作とされています。
本作品のレンブラントの表情は他の自画像と比較すると無表情に描かれているように思われますが、老体を思わせる深い皺の描写やその皺にあたる光の表現など細かく描写されています。
自身の芸術性や知識の優位性を表現していると考えられています。
一方で体の表現は粗く曖昧な表現となっています。レンブラントが作品の完璧性より自身の技術の優位性の表現を重視していたことが伺えます。
X線調査により当初はパレットや筆をもつ左手を上げて絵を描いている場面を描こうとしていたことが分かっています。
本作品は、その筆触を含めた技術的側面からレンブラントの真作とし確定していますが、制作年やレンブラントの署名がないことから未完の状態とも考えられています。
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