「無原罪の御宿り」とは、キリスト教の教義です。
「イエス・キリストだけでなく、その母マリアも神の意志によって原罪(アダムとイヴが犯した裏切り)を免れて生まれた存在である」という教義です。
この教義を絵画にする際には、いくつかの約束事がありましたが、ムリーリョは、その約束事を最小限に留めて本作品を制作しています。
ムリーリョが描いた愛らしく、親しみやすい聖母マリアは当時大きく人気を呼びました。
無原罪の御宿りの約束事
「無原罪の御宿り」は、スペイン絵画によく描かれたテーマでした。
画家で著述家でもあり、またベラスケスの師でもあったフランシスコ・バチェーコは、「無原罪の御り」を描く際の約束事を規定しました。
バチェーコは、異端審問所付美術監督官でした。
バチェーコが示した約束事は、
①マリアは12~13歳の若い女性
②手は胸元で、祈る姿
③足元に三日月
④白い服に青いマント
⑤12個の星の板垣を戴く
でした。
ベラスケスの「無原罪の御宿り」
(1618年)
ムリーリョが描いた約束事
「無原罪の御宿り」
(1660~1665年頃)
ムリーリョは、バチェーロの約束事を控えめにしながら従っています。
ムリーリョは、約束事の他に聖母の純潔を示す様々な表現を追加しています。
左の天使が持つのは、白いユリです。
白ユリは、純潔のシンボルです。
右の天使が持つバラは、もともとは棘が無くアダムとイヴが罪を犯したことから棘を持ったため、聖母とともに描かれるバラに棘はありません。
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