印象派の女性画家として活躍したベルト・モリゾの作品「植木に水をやる若い女性」です。
上流階級に生まれたベルト・モリゾは、当時、女性が絵画を学ぶことは難しい社会でしたが姉エドマ・モリゾとともに幼いころから絵画を学ぶことができ、プロの画家の道へ進みます。
コローに師事するなどした後、近代絵画の先駆的な画家エドゥアール・マネに師事、作品のモデルを務めるなど大きな影響を受け印象派の画家へとなります。
そのような背景のあるベルト・モリゾですが、18世紀のロココ期の代表的画家ジャン・オノレ・フラゴナールの家系でもあり、ロココ期の作品にも興味を持ち影響を受けていると言われています。
作品 植木に水をやる若い女性
本作品「植木に水をやる若い女性」は、モリゾらしい早い筆跡で後ろ姿の若い女性が描かれていますが、フラゴナールの作品「若い女性の背中」と類似した描写となっています。
「植木に水をやる若い女性」
(1883年)
(参考)「若い女性の背中」(ジャン・オノレ・フラゴナール)
モリゾが自身の家系の祖先でもあるフラゴナールの作品から着想を得たかどうかは不明ですが、幾重にも重なるスカートをたくし上げる様子やうなじが見えるよう髪をアップしている様子は非常に類似しています。
本作品では、女性は意図的に中心からはずれて配置されています。
鑑賞者は、まず女性に視線が向かいますが、その後は意図的に空いたスペースに描かれているテラスの柵や柵の外側の町の様子に視線が行くようになっています。
当時、女性が画家として活躍することのまえに、女性が戸外に出て作品制作をする自由も限られていたため、モリゾ自身も戸外で作品制作には制限があったようです。
本作品にはモリゾのそのような社会への不満をこめているのかもしれません。
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